那智の滝
(382)雲消ゆる那智のたかねに月たけて光をぬける滝の白糸(西行)
※那智の高嶺では山の上の雲が消え、真如の月が冴えわたり、滝の白糸が、月光を宿す飛沫を貫くかのように落下している。
那智に籠りて滝に入堂し侍(はべ)りけるに、この上に一二(いちに)の滝おはします。それへまゐるなりと申す常住の僧の侍りけるに、具してまゐりけり。花や咲きぬらんとたづねまほしかりける折節にて、たよりある心地して分けまゐりたり。二の滝のもとへまゐりつきたる。如意輪(にょいりん)の滝となん申すと聞きて、拝みければ、まことに少しうち傾(かたぶ)きたるやうに流れ下りて、尊く覚えけり。花山(くわざん)院の御庵室の跡の侍りける間に、年旧(ふ)りたりける桜の木の侍りけるを見て、「すみかとすれば」と詠ませ給ひけんこと思ひ出(い)でられて
(852)木(こ)のもとに すみけるあとを 見つるかな 那智の高嶺(たかね)の花を尋ねて(西行)
※那智の高嶺の桜の花を尋ねて、花山院が桜の木の下をすみかとされ、心を澄まされたあとを見たことだ。
▲西国巡礼も岐阜の「華厳寺」を残すのみとなった。西国巡礼は観音巡礼で、四国の88ヶ所巡礼よりも歴史が古い。写真は、「那智の滝」で、正確には「飛瀧(ひろう)神社」という。ただし、鳥居があるだけで、神社はない。滝が御神体だからである。西国第一番札所、「青岸渡寺(せいとがんじ)」は、滝からすこし登ったところにある。花山院は、西国巡礼の中興の祖とされておられる。
■さよなら思い出橋ー第36話・てんのじ村ー
萌は唄い終えると、立ち上がって拍手した長身の男の所へ行った。「よかったですよ」男は微笑んだ。萌もそれにつられるように微笑み返した。
店が終わって、萌は鉄治と一緒に「てんのじ村」にある家にもどった。「てんのじ村」というのは、大阪の芸人達があつまっている所で、鉄道の天王寺駅から歩いて10分ぐらいの所にあった。鉄治と萌が一緒に暮らすようになってから5ヶ月が過ぎようとしていた。二人は兄、妹のような関係で、それが5ヶ月もの間続いた。
空気が夏から秋に微妙に変化したある日、萌は鉄治に、「なあー鉄ちゃん、・・うち、この家出ようと思うねん」「ん?、出るって、どこ行くねん」「うん、・・義清さんとこに行こうと思とるねん」「義清って、よく店に来る、大学生か?」「うん」「あかんあかん、あんな、頼りない男」「そんなことゆうたかて、うち、もう決めたさかい」「・・・・」二人の間に沈黙が続いた。
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